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「ユーリが!?」
たちまちジョアンは青ざめ、ユーリの遺体を担いだトマに叫んだ。
「うん。……敵は、僕が死んだと勘違いして、浮かれている。逃げるなら、今のうちだよ。」
冷静に報告するトマに、ジャコモ船長は白旗をあげるように指示を出した。
「そんな?!」
驚くトマに、ジャコモ船長は厳しい顔で告げた。
「単なる船戦なら、それもよかろう。しかし、ワシらが目指すインヂアは、遥か水平線の彼方にある。そこを目指すためには、被害は最小限に食い止めなくてはならんのじゃ。」
「じゃあ、何のためにユーリは死んだの!」
船長に飛びかかろうとするトマを、ジョアンが受け止めた。
よく見ると。
ジャコモ船長の拳から血が滴り落ちていた……。
顔は見えないが、ジャコモ船長もまた、ユーリの死を悲しんでいた事が、トマにも伝わった。
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