嫁ぐ日

11/13
前へ
/1067ページ
次へ
「ほおっ! なんと美しい姫じゃ! 三郎は果報者じゃな、のう奥」 満面の笑みの信秀とは異なり、母親の土田御前は涼しげに帰蝶を一瞥すると、 「三郎にはもったいのう存じまする。 信行のほうが余程つりあいましょうほどに…」 「これ! 姫が不思議に思うであろう。 姫よ、疲れていよう。 部屋でゆるりと休まれよ。 平手」 「はっ。 さあ、姫様、こちらへ…」 「では、お言葉に甘えさせていただきまする。 ご無礼いたしまする」 きちんと手をついて一礼し、平手政秀に導かれて、異様な広間を後にした。
/1067ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1494人が本棚に入れています
本棚に追加