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【大黒柱】と言うのは家庭の事情からきている訳だけど…
父は私が十三の時に死に、残るは病弱な母と今年八つになる可愛い弟がいて、町外れの古い貸家に住んでいる。
昼は小さいながらも畑を耕し母と弟の世話をして、夜は島原で芸妓の真似事をして日銭を稼ぐ毎日が、もう三年続いていた。
最初の頃は父の残した金子で賄えたが、病弱な母が倒れ仕事が出来なくなってからは、私ひとりの稼ぎで薬代と生活費をやりくりしている。
それなのに。
それなのに、この男は!
「ホントにしつこい男ですね、貴方は。いい加減諦めて下さいよ。このままじゃ母の薬が買えなくなりますんで。」
溜息をついて、ちらりと見れば、
「それ、僕に関係なくない?」
出たよ、出ました、俺様発言っ!!
「…ソウデスネ。」
あはは…この人話し通じる人じゃなかったよ…
あ、間違った、人じゃないや。
人の生き血をすする、鬼じゃん。
もぅいいや…仕事変えよう…
「好きなだけ、お茶でも何でも飲んで下さいな。」
急須の残りを湯呑みに注いで、吉田先生に……栄太郎先生だっけか?いいやもうどっちでも、に渡す。
「あれ?やけに素直だね。まさか、明日から此処やめて、新しい仕事捜そうなんて思ってないよね?そんな事したら京中捜して、捕獲後は時々じゃなくて毎日通うよ?」
捕獲かい!眼が怖いんですけどっ!?
切れ長の涼しいお目元が、睨んでませんかね!?口しか笑えてないよっ!先生!!
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