酔狂

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「仕事変えるくらいなら、僕が身請けしてあげる。」 眼が笑ってないまま、言う台詞じゃないよ… 「私はここに売られた訳じゃないからね?それに身請けって店の丸儲けですけどっ!」 「あ、馬鹿なのに知ってたんだ。残念。」 舌をぺろっと出してお茶目だけど、凄く意地悪な顔だ。 「だいたいキミもさ、僕達と働けば今の何倍も金子が手に入るのに、なんで断るの?」 「真っ当な仕事がしたいからです。」 ぐっと睨むと、 「真っ当ねぇ。遊郭が?」 くっくっと喉を鳴らして笑った。 「もぅ、ほっといてもらえませんか。」 「いやだね。」 ーーーヒュン!と。 空を斬る音がして咄嗟に右手の中指と人差し指で、飛んできた鋭利なものを眼の前でピタッと止める。 「お見事。」 「あぶなっ…毎回やめてもらえませんかね。一応顔は商売道具なんで。」 挟んだものは爪楊枝一本。 それを先生の御膳に置いて戻した。 「その腕に金払うって言ってるのに。宝の持ち腐れってのは、キミの事を言うんだよ?お馬鹿さん。」 「この特技がお金になるとしても私はごめんです。いつ命を落としても不思議はない。私には養わなくてはならない家族がいるんです。私が死んでしまったら家族も死んでしまうから嫌ですって、何度もお話ししたはずですが?」 先生にいくら馬鹿にされても、これだけは譲れない。 「家族ね。三太郎は任務中に死んだんだよね?母は病弱で、弟はまだ八つ。そして佐和家の技を伝授された直系は…雪乃、キミひとりだ。」 弟の歳まで当てられて、正直びっくりした。 弟は京の町中にまで連れてきた事がないのに。 「…細かく調べてますね。もしかして以前弟に道を尋ねたのは、先生でしたか。」 先生は胡座をかいた足に片肘のせ、さらにその手に顎をのせ頬杖をつくと、にやりと笑った。 、
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