求婚騒動

25/37
4465人が本棚に入れています
本棚に追加
/723ページ
「いやー何か、途中で火種消えちまって困ってたとこに偶然貸してくれた親切な奴がいてよ。」 後からのこのこ顔を見せた馬鹿牛が、呑気にヘラヘラと笑う。 「そいつが帰りも手助けしてくれたもんで、俺らもめでたく五体満足で無事に帰れたっつー訳だ。あー良かった良かった。」 「…あのさ、屋根に誰かがいる時点で不思議に思わなかった訳?」 「ん?運がいいのは日頃の行いのおかげだろ。それに雪乃と弥市の知り合いだって言ってたぞ?」 「…知り合い、ねぇ。」 こいつは天性の馬鹿だと確信し、真実を説明するのも『牛の耳に念仏』なのだと最初から諦めた。 何の疑いも無く山崎って男を信じて頼りきっていたらしい馬鹿牛は、阿呆丸出しで満足気に鼻を高くしている。 「君達さ…命が惜しいなら、今度から馬鹿牛の愚行に付き合うのはやめた方がいいと思うよ。」 「言われずとも」 「そうする。」 巻き込んだ僕が言うのも何だけど、もしかすると今回一番の被害者は九一と玄瑞かも知れない。 土煙で汚れたまま話しを聞いていた二人は弥市にこっそり耳打ちされ、わかりやすい程青い顔をして見せた。 「そんでよ、皆無事なのは良かったけどよ…雪乃はどうしちまったんだ?どっか悪りぃのか?」 そして狙い澄ましたかのように、僕に不利な話しへと切り替わる。 「俺達が見た時は既に抱えていたな…」 「まさか最初から意識がない程、弱っていたのか?」 心配そうに雪乃を眺められると、少しだけ良心の呵責が疼く。 、
/723ページ

最初のコメントを投稿しよう!