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「雪?」
あれこれ詮索しているうちに先生が何歩か外に出ていて、勝手に省略した名称で私を呼ぶ。
…またかよ、いい加減にしてくれ…。
これからやらなければならないお決まり事は、毎回小っ恥ずかしくて正直やりたくない。
渋々先生が待つ側へ行けば、
「ん。」
自分の左頬を指で、ちょんちょんと軽く突く。
可愛いですけど?
めっちゃ可愛いんですけど?
他の女なら、一発でマジ惚れしちゃうんじゃないですか?
先生多分、確信犯だな…
仕方なく先生の左肩に右手をのせてツンと背伸びをすれば、先生がそれに合わせて少し頬を近付けて来る。
いつも軽く触れるだけにしようと思うのにワザと頬を動かしてくるから、毎回「ちゅ」って大きな音が鳴っちゃう。
まるで『行ってくるよ、お・ま・え』『いってらっしゃい、あ・な・た。』って飯事(ママゴト)みたいで、先生はそういうのがお好きなのか?とか、性癖を疑う。
なんてけなしながらも、さすがに恥ずかし過ぎるっス…
しかも、外だよ?皆が見てるからね?別にこの人、私の旦那じゃないからね?
その後、先生は必ず、
「次はここだから。」
と、自分の唇を指差す。
先生なりの照れ隠しなのか意地悪で困らせたいのかは、わからないのだけど。
さっきまで、殺伐とした話ししてたんだけどな、って思ってしまう。
そして、返す返事は私も同じで。
「心からお断りします。」
そう言って、さよならするのだ。
先生は愉快そうにいつも通り、
「また、ね?」
と言って笑いながら帰って行った。
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