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「身請けの話しも、だいぶん前にしてきはったんやけどな。あんたは売られて来た子ぉやないし、勝手はでけへん言うてお断りしてたんえ。」
な、なんですとっ!?
身請け話しは本当だったのか…
でも、だいぶん前って。
「いつ頃ですか?」
「…せやねぇ。先生来はりだして何回かした頃やったかなぁ?三百両払う言うて…」
「さ、ささ三百っ!?」
…あーなんか…あの先生が旗本か何かのボンボンに見えるよ…
でもなぁ、先生は高杉先生の仲間なんだよなぁ。
高杉先生の下で働いてたお父さんが任務中に死んじゃって、縁も切れたハズなんだけど…
あれから何年も経つのに高杉先生は少し前からヒョッコリ此処へやって来て、私に仲間になれー仲間になれーってしつこく声をかけてきた。
けど最近来なくなったから諦めたんだとばかり思ってたのに…
変わりに現れたのが、これまたくせ者の吉田先生。
高杉先生より割り増しで勧誘に来てんだよね…
まぁどういう経緯でそうなったのかは知らないけど、吉田先生は交渉の代理人として通ってる訳だ。
「でも女将さん、私の事売らなかったでしょ?だって売られて来た訳じゃなくても、知らん顔して売る人だっている世界だし。女将さんがいい人で良かったって本気で思うよ。」
にっこり笑うと、
「違うえ、うちはあの先生に絆(ホダ)されたんやわ。あんたの事、一生懸命考えて守ってくれたはる…ああいう男前には弱いんや。」
女将はニヤッと笑って返した。
いやいやいや…女将さん騙されてるって…
「…さあっ、もうちょいで花の咲く時間はおしまいや。最後まで、おきばりやす!」
ばちん!と背中を豪快に叩かれて痛かったけど…
女将さんが情のある優しい人だって改めてわかって、今日はちょっと嬉しかったりもしたんだ。
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