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島原を出た吉田は川の流れのようにサラサラ歩き、真っ直ぐに長州藩邸へと帰って行った。
忙しい合間をぬって二、三日に一度出る雪乃に会いに行っていたものだから、ここの所酷く睡眠不足で疲労が溜まっている。
毎度帰るなり即刻風呂を済ませ、朝まで爆睡が当たり前になっていた…のだが、
「おっ!おかえりっ栄太郎!!」
「……なんで君がここにいる訳?」
風呂から上がり、濡れた髪を拭きながら自分の部屋へ行くと、今は京にいないハズの顔があった。
しかもそいつはヌケヌケと、
「三太郎の娘が気になってさ。」
などと吐かし、人の部屋で晩酌していた。
「…馬鹿牛、なんで僕の部屋に無断で入って晩酌までしてる訳?死にたいの?」
せっかく風呂で疲れを落とし身体が温かいうちに布団へ潜ろうと思っていたら、高杉がその布団の上で寛ぎ占領しているのだ。
腹が立つのも当たり前な訳で…
ガツッ!!
「いでぇっ!?」
ゆらゆらと近付いて高杉の頭を大きな掌で鷲掴み、ミシミシと力を入れた。
「キミ、なんで此処にいるのかって聞いてるんだけど?頭潰されたい?」
「あだあぁぁーっ!?とりあえず手っ!離して!?中身出ちゃうからね!!」
掴んだまま片腕の握力と筋力で持ち上げ、ギロッと一睨みしてから一気に手を離す。
「あだだっ!…相っ変わらずの馬鹿力め…」
高杉は腰を撫でてから首を動かし、ブツブツと呟く。
「君がさ、どうしても家に用事があるって駄々こねて、僕に雪の事押し付けて消えたんだよね?帰るなら、なんで文のひとつも送らなかったの?」
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