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二年前の陸道教事件同様、私設捜査本部の存在は、少しも表に出ていない。
それが、真理としては喜ばしいのだ。
特に、歌津美の存在が世間の目にさらされる事は、何があっても避けたかった。あの少女が、マスコミの前に持ち出され、超能力者だと公開されればどのような事になるか。
下手をすれば、引きこもりに逆戻りだ。
真理には、二年前の秋島 一希の気持ちが分かる気がした。
天才だともて囃され、周囲に人が集まってくる中で、嫉みから誹謗中傷される事もあっただろう。歌津美には、そんな気持ちをさせたくない。
だからこそ、歌津美の存在を隠したのだ。
「それで、いいのよ」
本来なら、警察の捜査はすべての真実が明らかになり、同じ事件の再犯が起きないよう務めなければならない。
しかし、この事件だけは別だ。
真実がさらされる事で、生み出される悲劇の方が大きいのだろう。
普通である事の幸せ。
歌津美には、そのような未来を過ごして欲しいと真理は思う。
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