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元々それは、多岐川 沙菜が言い出した事。
それが実現されるかどうかが、歌津美にとっての心配事であった。その面では、ひとまず安心できたと言えよう。
だが、歌津美の心は晴れなかった。
目の前で、多岐川 沙菜と島本 芳樹が炎上したのを、目の当たりにしてしまったのだ。数ヶ月が過ぎようと、元の気持ちに戻れるものでは無い。
「どうして、あんな死に方を選んだんだろ」
犯罪者が、警察に追い詰められて死を選ぶ事はある。
罪を償うより、死を選ぶ。
そうした発想は、歌津美でも分からなくは無い。しかし、沙菜たちはそこまで追い詰められた印象も無く、能力を駆使すれば逃げる事は可能だっただろう。
それでも、死を選んだ。
歌津美は、この数ヶ月その理由ばかりを考えていた。
何か、祭りのあとの寂しさに似た感情を抱きながら。
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