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気温も低くなりすっかり冬の姿を見せつけている今日この頃、俺は門の死角に潜めながら左手にあるパンを頬張る。
気分はまるで調査隊だ。
...だが俺はこんなことを好きでやっている訳ではない。仕方なく相手の隙を伺っているのだ。
まず俺の目の前の光景を見てみよう。闇を思わせる漆黒の夜の真中に深紅に染まった月。それを際立たせるように光が降り注ぎ、屋敷全体を照らす。
まるでそこに在るのが当然ように佇んでいる。
その屋敷を守るかのように剣を腰に携え、質素な鎧を着た人間がポツリと立っている。
鎧だからか全体像は詳しく分からないが、頭部の隙間からは黄金色の眼光が鈍く光っている。
...ただ残念なのは、その眼は少し眠たそうな雰囲気を醸し出していることだ。
俺って意外と目は良い方なんだぜ。
見たところ大柄な男性で、現在自分の中に潜む睡魔と戦っているといった感じだ。だいぶ呑気なことで...。
恐らく彼はフリーの傭兵だろう。ここで門番をしているということは実力を飼われてここにいるに違いない。
ならば相当の実力者なのだろう。
となると早期決着が一番手っ取り早い。相手が油断している今がチャンスなのだ。なら速く行動に移さなくてはならない。
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