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──突然、門番の歩みが止まった。
...いや、少し追加しよう。止まったかと思われたがゆっくりと前に踏み出して歩みを続けた。
しかし今までの歩くリズムとは全然違う。まるで壊れかけたゼンマイの玩具のように必死に一歩一歩動かそうというのが分かる。
ふと門番の顔を見てみるとその目が俺を睨んでいるのが解った。
しかし俺を睨み付ける眼光はさっきまでの眠そうな感じではなく、仇を見つけたと言わんばかりの敵意に満ち溢れていた。
もしこの周りに人がいたのならば奇妙な光景に見えていただろう。
「てめぇ.........」
門番は身体を動かそうと必死に叫ぼうとするが、時すでに遅し。もう身体も殆ど自分の意思で動かす事は出来ず、声も掠れ声になってしまった。
しかし、まるで時が止まったかのようなこの空間の中で一人動き出す者がいた。
そう黒フードの男こと、ルインである。
俺は立ち止まっていた足を動かし悠々と門番の射程距離内に入りこむ。剣を振り回そうしているのが見てとれるが、どう足掻こうが無駄だということは俺自身が分かっている。
そのまま懐まで潜り込むと手を伸ばし顔面の鎧ごと掴んでやる。
そして手の平に魔力を送り込む。これで終わりだ......。
──次の瞬間、辺りに鈍い音が響き渡るのと同時に目の前の男は崩れさった。
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