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俺の目の前には鋼鉄の扉が立ち塞がっている。大きさは大柄な男性の一回りもでかく、それよりも少し小さい俺は若干見上げる形になってしまっている。手元にあるキャンドルで照らす扉は不気味さをより一層醸し出している。
そう、俺は無事に金庫まで辿り着けたのだ。
といっても最初から金庫の場所を知っていた俺にとっては容易だった。屋敷に侵入してしまえばこちらのものだからな。すぐにここまでこれた。
しかし、ここで疑問が浮かび上がってくる。
ここに侵入してから俺の体内時計で五分以上は過ぎていると思う。
なのにここまでの道のりの中で誰一人会っていないのはおかしい。
普通なら主人が不在でもメイドやら執事やらが徘徊している。それが夜だとしても常に誰かしらはいる筈なのに、不気味なくらい誰もいないのだ。
只単に人員不足の問題に陥っているのか。それとも今まで侵入されたことのない故の慢心から来るものなのか。どちらにせよ好都合だ。早速、行動に移すとしよう。
まずは鋼鉄の扉に手を触れる。触れた先からひんやりとした冷たさが染み込んでくる。そしてもう一度目の前の扉を見つめ直す。
ふむ、この造りは城内の金庫と形状が似ているな。主に内側の仕組みとかが。やっぱり現在はこれが主流なのか。
このタイプの金庫は最先端の呪導式型だといえる。どういうことなのか簡単に説明すると、その金庫に設定されている呪文......つまりパスワードを唱えなければ開けられない仕組みの代物ということだ。しかも何重にもロックがかけられていて開けるのがこの上なく面倒臭い。
しかも扉含め回り全てに鋼鉄で構成されている為、物理的にここの金庫を突破しようにも頑丈すぎて破ることは困難なのだ。
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