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1章
 ̄ ̄
ピンポーン
深夜1時、再び扉の呼び出し音が鳴った。
「これで51回目だ。」
僕は大きな溜め息をつく。
「しっ、
喋っちゃ駄目!」
隣にいた蓮が小声で僕に忠告した。
「すみませーん、警察の者ですが。」
このセリフを聞くのも51回目……
「ねぇ、居留守なんてとっくに気付かれてるんじゃないの?」
僕はささやき声で蓮に言った。
夜の10時から、奴はずっとああしている。
「そんなことない。バレてるなら、無理矢理にでも中に入ってこようとするはずだもん。」
蓮は自信に満ちた口調で言った。
僕は再び溜め息をつく。
お前のような奴が警察なものか!
今すぐ扉を開け放ち、そんな風に叫びたい衝動に駆られる。
しかし、もしも扉を開けてしまったなら……
きっと警察官は、手に持つ銃で僕を撃ち抜くだろう。
「どうして僕なんだ。」
僕は小さく呟いた。
「亘……」
蓮は憐れんだ目をした。
「仕方ないよ。
世界が君を、殺したがっているのだから。」
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