1章

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始まりは覚えていない。 いつの間にか、すべてが僕の敵だった。 動物も、植物も、人間も…… 機会さえあれば僕の命を狙っているのだ。 ただそれに気付き始めたのは、つい最近のこと。 「そんな顔しないでよ。私が亘を守るって言ったでしょ?」 蓮はこげ茶色の瞳を細めて、ニッと笑った。 「君は何も心配するな。」 蓮……、彼女と出会ったのは数ヶ月前。 駅前の交差点で、中年の男に殺されそうなところを救われた。 相手は刃物を所持していて、蓮がいなければ僕は死んでいただろう。 後に分かったことだが、蓮は僕と同じ14歳。 胸の下まである長い髪の毛は瞳の色と同じこげ茶色で、八重歯が印象的な女の子だった。 背の小さな僕よりももっと小さな女の子。 でも、蓮は僕よりずっと強かった。 何度も何度も、僕を世界から守ってくれるのだから。 「亘、この場所ももう駄目だ。 日が昇る前に逃げよう。」 蓮はそう言って大きなリュックを取りだしてきた。 「でも、警察官が……」 僕は玄関の方向へ目をやる。 「それなら大丈夫。ほら、聞こえる?」 蓮に言われ、僕は耳を澄ます。 するとブロロロロ、とエンジンを掛ける音がした。 「ね?奴はようやく諦めたようだ。 さ、早く荷作りをしよう。」
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