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始まりは覚えていない。
いつの間にか、すべてが僕の敵だった。
動物も、植物も、人間も……
機会さえあれば僕の命を狙っているのだ。
ただそれに気付き始めたのは、つい最近のこと。
「そんな顔しないでよ。私が亘を守るって言ったでしょ?」
蓮はこげ茶色の瞳を細めて、ニッと笑った。
「君は何も心配するな。」
蓮……、彼女と出会ったのは数ヶ月前。
駅前の交差点で、中年の男に殺されそうなところを救われた。
相手は刃物を所持していて、蓮がいなければ僕は死んでいただろう。
後に分かったことだが、蓮は僕と同じ14歳。
胸の下まである長い髪の毛は瞳の色と同じこげ茶色で、八重歯が印象的な女の子だった。
背の小さな僕よりももっと小さな女の子。
でも、蓮は僕よりずっと強かった。
何度も何度も、僕を世界から守ってくれるのだから。
「亘、この場所ももう駄目だ。
日が昇る前に逃げよう。」
蓮はそう言って大きなリュックを取りだしてきた。
「でも、警察官が……」
僕は玄関の方向へ目をやる。
「それなら大丈夫。ほら、聞こえる?」
蓮に言われ、僕は耳を澄ます。
するとブロロロロ、とエンジンを掛ける音がした。
「ね?奴はようやく諦めたようだ。
さ、早く荷作りをしよう。」
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