1章

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画面の中では、小さな掃除機のようなものを持った男がほほ笑んでいた。 深夜のテレビショッピング。 観客は大げさに拍手を送る。 ピ、 画面は切り替わり、ニュース番組になった。 玉突き事故や、国外の自爆テロのニュースが流れる。 ピ、 次はバラエティー番組。 ピ、 天気予報。 「えっと……、亘?」 いつの間にか後ろにいた蓮が、おずおずと話しかけてきた。 「……明日の降水確率60パーセントだって。 傘、持って行った方がいいかも。」 僕はそう言うと、テレビを切った。 「あ、傘!」 蓮は思い出したように叫んで玄関に走って行く。 僕は消えたテレビを睨みつけた。 どうしてなんだ。 テレビの中は今まで通りの現実で、なのに俺はその現実から爪弾きにされてしまった。 僕は、どうして命を狙われている? 「さ、亘。出発しよう。」 「あ、うん。」 蓮の声で我に返り、僕はコクッと頷いた。 そして重いリュックを背負う。 「気持ちいいね。」 蓮は外の空気を思い切り吸いこんで言った。 真夏とはいえ、深夜の空気は涼しいものだった。 先ほどまで閉め切った部屋の中で息を潜めていたことを考えると、生き返る思いだ。 「こっち。」 蓮は僕の前に立ち、歩き始めた。
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