1章

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「ねぇ、蓮。行く当ては?」 僕はズンズンと先へ進む彼女に尋ねた。 「うん、ちょっと遠い場所に行く。」 「遠い場所?」 僕は早足の彼女に遅れまいと必死について行く。 「次、僕の家じゃ駄目なの?ここから近いけど……」 この僕の言葉に、蓮はピタリと歩みを止めて振り返った。 「馬鹿! 狙われているのは亘だよ?君の家なんて危険すぎる!」 「言ってみただけだよ……」 僕は小さくなって呟いた。 数ヶ月前、蓮に命を救われた日から、僕は家に戻っていない。 全ては蓮が、僕を世界から守るためにしていることだ。 「私、毎年夏になると行ってた別荘があるの。次はそこに住む。」 蓮はそう言うと、また歩き始めた。 と、その時。 ガシャン! 後ろで、窓ガラスの割れる音がした。 「何だ?」 僕ははっとして後ろを振り返る。 すると、先ほどまで僕と蓮がいた家に明かりが灯っているのが見えた。 複数の人影が、窓から中へ侵入している。 「そんな……」 僕は呆然として、その様子を眺めた。 もし出発がもう少し遅ければ、僕はあの人たちに殺されていただろう。 「亘、こっちの道に行こう。」 蓮は震える僕の手を握って、わき道へと向かった。
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