29人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ、蓮。行く当ては?」
僕はズンズンと先へ進む彼女に尋ねた。
「うん、ちょっと遠い場所に行く。」
「遠い場所?」
僕は早足の彼女に遅れまいと必死について行く。
「次、僕の家じゃ駄目なの?ここから近いけど……」
この僕の言葉に、蓮はピタリと歩みを止めて振り返った。
「馬鹿!
狙われているのは亘だよ?君の家なんて危険すぎる!」
「言ってみただけだよ……」
僕は小さくなって呟いた。
数ヶ月前、蓮に命を救われた日から、僕は家に戻っていない。
全ては蓮が、僕を世界から守るためにしていることだ。
「私、毎年夏になると行ってた別荘があるの。次はそこに住む。」
蓮はそう言うと、また歩き始めた。
と、その時。
ガシャン!
後ろで、窓ガラスの割れる音がした。
「何だ?」
僕ははっとして後ろを振り返る。
すると、先ほどまで僕と蓮がいた家に明かりが灯っているのが見えた。
複数の人影が、窓から中へ侵入している。
「そんな……」
僕は呆然として、その様子を眺めた。
もし出発がもう少し遅ければ、僕はあの人たちに殺されていただろう。
「亘、こっちの道に行こう。」
蓮は震える僕の手を握って、わき道へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!