1章

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「できるだけ人けのない道を通って行こう。」 蓮は辺りを注意深く警戒しながら、しかし早足のまま言った。 普通なら逆だろうになぁと、僕は心の中で呟く。 『人けのある』道を避けなければならないなんて。 「別荘ってかなり遠いんじゃない?」 僕は不安になって言ってみた。 『別荘』なのだ。 歩いて行ける距離に作るはずがない。 「そうだね、すごく遠いかも。」 蓮は問題にしている様子もなく、さらりと言った。 「電車使うの?」 一応確認のため聞いてみる。 「死にたいの? 歩くに決まってるじゃん。」 蓮の答えは予想通りだった。 「多分行くのに数日はかかるよ。ビジネスホテルに泊まったりとか野宿とかしないとね。」 「そう……」 僕はそれ以上何も言えなかった。 蓮がこんなことをするのは僕のためなのだ。 僕は文句を言える立場にはない。 「日が昇る前に隣町までは行こうね。」 蓮はそう言っていっそう歩調を速めた。
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