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「父さん。ようやくニューセンス王国から手紙が来たよ。」
「む、来たか。」
西洋風の高級な家具の並んだ王城のある一室。そこにはスローラル王国現国王、アデル・スローラルとその息子のゼノンがいた。
アデルはゼノンから手紙を受け取り封を解くと、折りたたまれた手紙をゆっくりと開いた。
アデルが無表情のまま手紙に目を通す。結局、読み終わるまでアデルは一言も話さなかった。
「………」
「どう……なんだい?」
アデルは無言を貫くが視線を床に落としている。何か考え事をしているのだろう。
「やはり…ちっとばかし難しいものがあるの…」
「協力的じゃないってこと?」
「そうなる。」
「うーん……」
二人は肩を落とした。残念そうな顔がうかがえる。
「ニューセンス王国が今の状態まで発展したのはほとんど自分達の力だからのう、やはり山よりも高く谷より深い誇りというものがあるんじゃろ。」
「魔族に対処する上で他国の下に付く可能性を恐れたんだね。」
「そうじゃ。」
ニューセンス王国は技術大国である。四カ国が覇権争いで戦争に明け暮れていた頃、この国は他国と秘密裏に手を組むことさえ許さず閉鎖的な主張を繰り返していた。
そのために、戦前から交易を行っていた他三カ国より技術も戦力も劣り、覇権争いから最初に脱落した国なのである。
しかし、その時に止まったままでいたニューセンス王国の技術進歩は他三カ国のほんの少しの技術提供により大きく発展し、現在に至っては四カ国最大の技術を誇るまでに至ったのである。
しかしそれがあったのはほんの一時期だけ。それからというもの、現在ではニューセンス王国が他三カ国に技術を配布する形ばかりがとられているのだ。
もし再び戦争が起こるものなら、たとえ魔法実力者で栄えたスローラルでもニューセンス王国には迂闊に手を出せないだろう。
どんな『技術』によるしっぺ返しが返ってくるかわからないからだ。
実際、ニューセンス王国は基本は協力的である。
偏った軍事国家といわけでもなく、国民たちも心優しい者で溢れている。
しかし、それだけに『平等』に厳しく、誇り高き国なのである。
今度だけ非協力的であるのは、万が一どこかの国の下に付くことや医療の道具にされることを恐れたためであろう。
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