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ここは西の大陸、スローラル王国。魔術の力を誇る、『武』を誇りとする国だ。
そんな国のとある屋敷の中で、従者である侍女に起こされようとする一人の青年がいた。
「エル様、起きてください。時間です。」
侍女である女性が肩を揺する金髪の青年。彼はこの国でも強大な権力を有する貴族であった。
その名は、エル・ソルト。
この王国に設置された五大貴族の一角、“雷”を受け持つ名家の嫡男だ。
「んん……なっ……貴様!誰の体に触れている!メイド風情が僕に触るな!」
「え!?きゃッ!?」
揺り起こされた金髪の青年、エルはたいそう不機嫌そうにして侍女の手を振り払い、その肩を力強く突き飛ばす。
突き飛ばされた侍女は床に尻餅をつき、呻き声を上げた。
「し、しかしエル様。お時間のほうが……」
「口答えするな!クビにされたいのか!」
「ぁ……い、いえ、すみません……」
エルはこれ見よがしに鼻を鳴らし、侍女に触れるな言っていたのにも関わらず着替えを手伝わせた。
白いローブに身を包めたエルは背に垂らす黄金色の長髪を靡かせ、腰に手を添えた。
「朝食だ、準備しろ。父上は今どこにいる?」
「は、はいっ!旦那様も部屋で身支度をなさっております。」
「ふんっ………」
侍女が返事をすると、エルは何も言わず再び鼻を鳴らし、食堂へと早足で赴くのだった。
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