エル・ソルト

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ここはスローラル王国東北、交流試合試合会場。 ここでスローラル王国とフロール王国の五大貴族同士の交流試合が行われる。 会場の入口にはこの2カ国でなく、南方のナルサバ王国、東方のニューセンス王国からの観客も多く押し寄せて来ていた。 「到着しました。旦那様、エル様。」 御者によって馬車の扉が開けられる。二人は会場の前で馬車から降りた。 エルは地に足を付けると、直ぐに父に話しかける。 「父上、僕は今から会いに行く人がいます。父上はどうなさるのですか?」 質問すると、父ウルは会話する事も煩わしそうに眉を顰めて答えた。 「私は今から他の貴族に挨拶に行く。貴様も試合の控え室で会うことになるだろう。同様に挨拶をしておけ。」 「わかりました父上。それでは失礼します。」 エルは父と反対方向に身を向ける。 「待てエル。」 「はい?」 エルが歩き出そうとすると父が低い声で引き留めた。エルは身を翻して父を見る。 「今日もつまらない試合をしてみろ。私はもう貴様のことをどうとも思わなくなるだろう。無様な真似だけはするんじゃないぞ。」 「僕が負けることなんてある筈が無いじゃないですか父上。必ずや素晴らしい試合をお見せします。」 「……そうか。ならいい、行け。」 「はい、それでは。」 エルはウルに背を向ける。その顔には既に不敵な笑みが浮かんでいた。 怪しげな雰囲気を漂わせたまま、エルは会場へと向かって行く。
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