エル・ソルト

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一方、場所は変わり、此処はフロール王国側、選手控え室。 一人の少女が、長年の付き合いである幼馴染に話し掛ける。 「イリス調子はどう……って、何か機嫌が悪そうだね。」 「当たり前よ。なんでスローラルの最低な奴と戦わなくちゃいけないのよ!」 彼女達はフロール王国の五大貴族だ。話しかけられた方は“雷”を受け持つ名家の娘、イリス・フルーネ。話しかけた方は“光”を受け持つ名家の娘だ。 「やっぱり、あの噂って本当なの?この国の、えっと……エル・ソルトさんだったっけ?権力を武器にして人々を苦しめてるって。」 「……本当らしいわ。パパが前にあいつの父親から『息子の悪行に困ってる』って相談されたらしいの。」 エルの振る舞いは他国の貴族にも伝わっていた。その上情報が細かいので信憑性が増し、毛嫌いされるようになってしまっている。 「その割に魔術はてんで苦手だって言うじゃない!なんでこんなことのためにスローラル王国まで来なきゃいけないわけ!?」 「ま、まあまあ…….落ち着こうよイリス……」 “光”の少女がイリスを宥める。イリスは不満を溜め息と共に吐き出すことによって心を落ち着かせた。 「ああもう……!これからのことを考えると憂鬱だわ!ちょっと外の空気吸ってくる!」 「あ……ファンとかに気をつけてね、イリス。」 「大丈夫よ!」 イリスは控え室のベンチから立ち上がると、不機嫌そうな顔で控え室から出て行った。 その背中を眺めながら、“光”の少女は不安げな顔を浮かべていた。
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