エル・ソルト

8/17
前へ
/453ページ
次へ
────────────────────── 一方、ここはスローラル王国側の選手控え室。 「おい……あいつはまだかッ!」 「落ち着きなよ、なんだかんだ彼はいつも一番に来てるじゃない。」 こちらの控え室では、エルの到着の遅さに“火”の名家の青年が暴れ始めていた。“水”の名家の少年はそんな彼をどうにか宥めている。 「あいつ……まさかいつも自分だけ勝てないからって逃げたんじゃねぇだろうな……」 「そんなことをしたらあたしがぶっ飛ばすわよ!」 “火”の苛立ちに対し、近くに居た“闇”の名家の少女も不機嫌さを前面に出していた。どうやら二人の性格には似ている部分があるようだ。 「あ、あの……みんな落ち着いて……」 そんな二人を前におろおろとしているのは、“光”の名家の少女だ。白金色の長髪が美しさを放っている。 「み、みんなっ……あ………」 そんな光の貴族の少女の後ろで控え室の扉が開く。振り向いて確認すると、エルが入って来た。 「おや……?」 あまりの遅い登場に、彼女は暫くエルの方を見てしまう。そのせいで、エルがその視線に気付いてしまった。 「シェリアじゃないか!今日もなんて美しいんだ!やはり君は僕にこそ相応しい人物だ!」 「ひうっ………」 エルはシェリアという少女が目に入った途端、即座に距離を詰めて褒め始めた。 シェリアはそんなエルに対し小さな声で悲鳴を上げ、怯え始める。 「こらぁッ!シェリアから離れなさい!あんた良い加減にしないとぶっ飛ばすわよ!」 そんな時、“闇”の少女がエルとシェリアの間に割って入った。 「何だい?君には関係の無いことだろう。」 「大有りよ!シェリアが怯えてるわ!親友として放っておけるはずがない!」 「はあ?何だって?」 エルは少女の話を聞き、あり得ないと言いたげな表情を浮かべてシェリアの顔を見た。 「………」 「ほら!怯えてるじゃない!」 エルがシェリアの顔を見て黙ると、“闇”の少女はなおも言及を続けた。 すると、エルは観念したかのような表情を浮かべ嘲るように笑った。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30840人が本棚に入れています
本棚に追加