エル・ソルト

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「はいはいわかったよ。全く…これだから野蛮な女は嫌いだ……」 「何ですって!?」 「言葉通りさ。君みたいな暴力的な人間は女性としての価値すらないね。」 「こ、こんのッ……!」 エルはまたしても相手を馬鹿にして怒らせる。“闇”の少女はエルの言葉に傷付き涙を浮かべつつ、怒りに震えた。 「おいてめぇいい加減にしろよ。」 「ぁ……」 だがしかし、少女の代わりに“火”の赤髪の青年がエルの前に立ち塞がり、胸倉をつかんだ。 エルは首元を絞められながらも余裕そうに笑みを浮かべる。 「何だ来ていたのか。いつも遅いのに珍しいじゃないか。」 「はん、そういうてめぇは随分と遅かったじゃねぇか。」 「ちょ、ちょっとやめてよ!」 一触即発な空気が漂い始める。そこに、“火”の青年の剣幕に怒りを忘れた黒髪の少女が慌てて止めに入った。 「勝つための下準備だよ。生憎と僕は君らみたいに浅慮じゃないからね。」 「んだと……?その割りにてめぇはいつも負けてるじゃねぇか。」 「まさか、この僕が負けるはず無いじゃないか。」 「また始まったよ……」 エルと“火”の青年が口喧嘩を始める。その様子を見て“水”の少年は溜め息をついた。どうやら二人は毎度同じことをしているようだ。   「…………そうだ、小細工なんかしなくたってこの僕が負けるはずがないんだ……」 「あ゛?なんか言ったか?」 エルの小言に“火”の青年が反応する。 「何も言っていないよ。頭の悪さにとうとう幻聴が始まったのかい?」 「何だと!?テメ、調子に乗ってんじゃーー」 「いい加減にしなさいよあんた達!」 二人のぶつかり合いに痺れを切らした“闇”の少女は別の意味で怒り出す。このままでは試合に支障を来してしまう。 「み、みんな……もうすぐ始まるよ……」 そんな中、“光”の少女───シェリアは三人を宥めようと口を挟む。彼女なりの気遣いであろう。 「ああ、これは済まなかったねシェリア。お詫びに今度お茶でもどうだい?」 「ぐっ……」 「ひっ……あ、あの………」 シェリアの声に、エルは“火”の青年の手を引き剥がして直ぐに彼女に詰め寄る。 そんなエルの態度の移ろいにシェリアは再び怯える態度で仰け反った。 そんな彼女の前を、先ほどと同じように“闇”の少女が立ち塞ぐ。
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