エル・ソルト

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ステージの上には既にフロール王国の“雷”であるイリスが待ち構えていた。 たいそう不機嫌な顔でエルを睨み付けている。 「やあ、さっきの話、考えてくれたかい?」 「まさか!容赦なく叩き潰してくれるわよ!」 「ふふ……本当はどうなんだろうね……」 相対する二人の眼差しは正反対だ。勝利をつかむのは自信満々のエルなのか、それともエルに怒りを剥き出しにしているイリスなのか。 『それでは、試合を始めます。両者、位置について………始め!!』 「僕が負けるか!」 試合が始まる。 エルは開始と同時にイリスへと駆け出す。 「感電せよ、『サンダーボール』!」 エルは魔法名を唱えると、手から両手で持てる程の大きさの雷球を生み出した。 「行けえッ!僕の攻撃魔法!」 そして右腕を前方に翳し、それをイリスに放つ。雷球は真っ直ぐイリスの元へと向かって行く。 対し、イリスは余裕そうな笑みを浮かべていた。 「あんた、まだ初級魔法に詠唱を必要としているわけ?『サンダーボール』!」 イリスもエルと同じ魔法を発動。こちらはエルのとは違って詠唱が省かれている。 「くっ……何だと!」 双方から放たれた雷球はお互いにぶつかり合い、バチバチと大きな音を立てて相殺された。 「今度はこっちの番よ!『ボルテックショット』!」 イリスはすかさず中級魔法を無詠唱で発動。掌から発動された歪な電撃が楕円形の弾丸となってエルに向かう。 「ひ、ひぃっ!」 恐るべき速さの中級魔法はエルに肉薄する。それに対してエルは悲鳴を上げて恐れ戦(おのの)き、逃げるように横に跳び込む。 咄嗟の判断が功を成したのか、魔法は紙一重でエルの真横を通過した。 「へぇ、避けたんだ。」 「き、貴様!よくも僕の服を汚したな!もう手加減はしないぞ!」 イリスはそんなエルを見て余裕の笑みを浮かべる。憎らしい相手の無様な姿を見られて清々としているようだ。 それに対し、今度はエルが激昂。どうやら今までは手加減をしていたような口ぶりをしていたが、なかなか疑わしいものだ。 「纏いたまえ、『リフレクトアーマー』!」 ぷりぷりと怒るエルは補助魔法を叫ぶようにして唱えた。すると、金色の魔力がエルの身体に纏わり付くように広がり、装甲が完成する。 だが怒りに任せて発動したのか、どうもそれは不出来なものだった。
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