エル・ソルト

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「こ、これで僕はもう負けないはずだ!」 「甘いわよ!『ボルテックショット』!」 イリスはエルの話を聞かずに再び攻撃魔法を無詠唱で発動する。 魔法は先ほどと同じように弾丸となり、恐るべき速さでエルへと真っ直ぐ向かった。 「こ、来いッ!!」 しかし、何故か自信満々のエルはそれを避けようともしない。 当然ながら、その魔法はエルに直撃した。 「ぐああああああッ!!!?」  身体に纏わせていた補助魔法はあっさりと破られ、エルは宙を飛ぶ。 感電しながら地面に打ち付けられ、何度も転がった。 「あ、あんた……補助魔法使ったわよね?そろそろとどめを刺してあげるわよ!」 イリスはあまりの呆気無さに拍子抜けするが、それでもこれは勝負。本気を出して勝利を収めようと、エルの元へと駆け出した。 「召喚!《デュランダル》!」 イリスは走りながら魔武器を召喚する。その手には、紫紺色の片手剣が現れた。 それを構え、エルに向けて振りかぶる。 「最低のあんたにプレゼントよ!ぶっ潰れなさい!!」 斬り付けて終わり。イリスはそう算段を立てていた。 だが、そこに制止を掛ける者が居た。 「まっ、待て!」 「っ!?」 エルが両手をイリスに向けたのだ。 思わずイリスは攻撃を中断して止まってしまう。 「な、何を───」 「最後のチャンスだぞ!負けてくれたらどんなものでもやると言ってるんだ!だから僕の魔法を大人しく受けろ!」 「なっ……!」 反省することはおろか、エルはイリスに傲慢な態度を示した。その態度にイリスは驚き、さらに怒りを増幅させた。 「こ、こんのッ……!まだ反省が足りないようねッ……」 イリスは怒りのあまり身を震わせる。そして、そのままゆっくりと魔武器である片手剣の《デュランダル》を構え直した。 「………」 黙ったままエルの元へと歩き出す。その姿を真正面から捉えるエルの目には阿修羅が映った。 「ひっ!な、何を───」 「死ねぇッ!!」 「ぐはぁッ!!?」 イリスは片手剣を見えないほどの速さで振り、その柄でエルの頬を殴りつけた。 「う、うぅ……ッ……」 「ふん、ざまあみろ!」 エルは呆気なく崩れ落ちる。薄れ行く意識の中、最後に見たものは汚物を見るようなイリスの冷たい目だった。 ─────────────────────
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