エル・ソルト

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─────────────────────── 時は経ち、翌日のソルト家。 五大貴族交流試合はエルのみが負けた。結果としては四勝一敗でスローラル王国勝利を収めたのだ。因みにこの試合は団体戦だが、観客のために五試合目まで行われた。 「貴様エル!なんて恥知らずな試合をしてくれた!八百長など以ての外の行為だ!」 ウルはエルの試合後にイリスの怒りがあまりにも激しいことに気付いた。気掛かりに思い試合後イリスとその父のもとに訪れ、理由を尋ねてみたのだ。 挙げ句、エルはイリスに八百長をしていた。ウルはそのことにひどく驚き激昂し、フルーネ家に正式に詫びを入れたのだった。 「す、すみません父上!ただ僕は父上に勝つ姿をお見せしたくて───」 「黙れッ!!貴様の言い訳など聞きたくないわ!」 酷い怒りようだ。この怒鳴り声はウル達のいる執務室だけでなく、きっと屋中に響き渡っていることだろう。 「会場の前で言った筈だ!『無様な真似をしたらお前などもう知らん』と。お前に貴族の生活などもったいないわ!メイドにはもうお前の世話をさせん!明日から全て自分でやれ!」 「そ、そんな……」 エルは父の言うことに落ち込み、子犬のような目を向ける。それでもウルが止まる様子は無さそうだ。 「ましてや私の大事な民を奴隷として差し出すだと!?親としてこれだけは言わないでいたが、もう我慢出来ん!貴様は人間のクズだ!」 「ううっ………はっ!?」 エルはとことん父に怒鳴られ、落ち込み項垂れた。しかし、そんなところにあることを思い出した。 「ちょ、ちょっと待ってください!それなら…それならの明日行われるはずの僕の誕生日パーティーはどうなるのですか!?」 「そんなものが行われると思うのか!反省して頭を冷やしてろ!」 「そ、そんなぁっ……!」 とうとうエルは泣きそうになる。これが十八歳を翌日に迎えるエルと思うと疑わしいものだ。 「うう……わかりました。本当に申し訳ありませんでした……」 「ふんっ、さっさと出て行けクズが。」 エルはより背中を丸める。見上げればうウルの腐ったものでも見るような嫌な視線。 エルは、黙ってウルの執務室から出て行った。
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