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「ん……朝か………」
目を開けてみると、目の先にはいつも通りであるはずなのにまるで初めて見たように感じる天井があった
俺は目覚めて数秒で意識が覚醒する。
……そうだ。俺はこのエル・ソルトとして生まれたのか。
そして、今日は俺の18歳の誕生日。前世では既に迎えていため、いまいち実感が湧かない。
「………」
そんなことよりも、俺ただショックを受けていた。それはこの世界で生きてきた俺の魂の事だ。
俺が今置かれている状態ではない。
魂の転生……つまり、昨日までのエル・ソルトの性格と前世の俺の魂は同じものである。
───つまり、もし前世の地球で俺に金と権力があったならば、この世界のエル・ソルトと同じように傲慢で最低な人間に育っていたということだ。
「……くそ。」
同じ魂でも、育つ環境によってここまで性格の違いが現れる……俺はその現実に胸糞悪さを覚えた。
(……どうにかしないとな………)
エル・ソルト……いや、俺は間違いなく周りに嫌われていることだろう。これからの行く先が不安にすらなって来た。
「……先ずは起きるか。」
心機一転。悩んでても仕方ない、先ずは立ち上がってするべきことはしっかりしよう。昨夜に父上から怒られたばかりではないか。
「……っと。」
立ち上がり、顔を洗うために部屋の洗面台へと向かう。西洋風で高級感が漂っているが、見慣れた光景と感じてしまうのが凄い。
そして洗面台の前に立ち、いざ顔を洗おうとするのだが……
「……邪魔な髪の毛だな………」
思い返せば、この世界の俺は髪を伸ばした先に美しさが見つかるとか何とか思っていた。血迷っているとはこの事か。
「……うお………」
……よく振り返ると、これまでの愚行の恥ずかしさに顔が赤くなってしまう。もう一度死ねそうだ。いや、冗談だけれども。
「……切るか。」
このままにしておく気はさらさら無い。自分で散髪……もとい断髪するのには抵抗があるが、生憎と俺の趣味ではない。
幸いにも、洗面台の棚には自分で使おうとも思ってなかったカット用のハサミが配備されている。実に助かる。
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