成金の精進!!

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「よ、よし……やるか。」 緊張はするものの、俺はハサミを手に取って髪の毛の途中をぶつりと切った。梳(す)くのは最後に思いっきりやればいいだろう。 「自分で切るのは高校以来だ……って、この世界ではまだ高等部生か。」 そんなことを一人でぶつぶつと言いつつ、俺は昔の感覚を取り戻しながら散髪を進めていった。 慣れない手付きで進めて数十分後、完成する。 「ん、できた。」 髪型が出来上がった。この世界で、エル・ソルトが幼い頃にしていた髪型。長過ぎず短過ぎす、自然なこれが一番丁度良い。 「上手く出来たな……ん?」 そんなとき、部屋の戸がノックされる音が聞こえた。前世の記憶を手にして初のご対面だ。 「ど、どうぞ……」 入室を促すも、妙な緊張感を抱えてしまう。だがしかし、この世界でも生きてきたのだから日常に慣れている自分もいるのだ。だから落ち着け、俺。 「───失礼しま……キャアアアアッ!」 「うおっ!?」 いきなり叫ばれてしまった。あまりにも突然過ぎて俺も驚いてしまう。 「い、いったいどうなされたのですか!」 「い、いや、どうって言われても……」 声の正体はこの屋敷に生きる侍女だった。 いわゆるメイドだ。今日から何も俺の世話をしないんじゃなかったのか? 「髪の毛を切っていたんだ。伸ばしすぎていい加減邪魔に感じていたからな。」 「そっ、そんなことは私がやります!」 「……は?」 このメイドは父上から話しを聞いていないのだろうか。確か自分の身の回りの事は自分でするようにと言い渡されていたはずだ。
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