成金の精進!!

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部屋を抜け出し、まだ人の少ない廊下を歩くと食堂に辿り着く。俺はその両開きになる扉に手を掛け、その奥へと進んだ。 「おはようございます、父上、母上。」 中に入ってみると、そこでは俺以外の家族三人が揃って席に付いていた。 ……強く怒られた後だ。父上にはかなり顔を合わせづらい。しかし堪えなければ。 「……お前の朝食は無いぞ。食べたいのなら自分で作るのだな。」 「もう、ウル。それはいくらなんでもエルに厳し過ぎよ………て、エル!?その髪っ……!」 「何……なっ!?」 父上も母上も俺の顔を見て驚いている。俺の髪の毛は昨日まで背中の真ん中辺りまで伸びていたのだ。これもまた驚くのも無理はないと思う。 「大丈夫です母上。己の自業自得な行いがこうさせたのです。因果応報というものです。自分のことくらいは自分でしなくては。」 「そ、そう……怪我に気をつけてね。」 外見だけで場を圧倒出来るとは思わなかった。それでも母上は労いの言葉を俺に向けてくれている。 ……今思えば、母上はいつも傲岸不遜な俺に対して優しくしてくれていた。どんなに感謝しても仕切れないだろうな。
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