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「危険です。絶対に止めた方がいいです。」
「うるさいな、何回もやってるんだ。もう慣れたよ。」
修練場の真ん中、そこにアルとエルザは立っていた。
相変わらずアルは危険性の高い魔力の底上げの練習をしようとしている。
対し、エルザは毎日アルのその練習を止めようと説得しに来ていた。
「それでも失敗したときのリスクが大き過ぎます!医務室は貴方だけの怪我を治すためにあるんじゃないですよ!」
「その言葉が正しいとして、君に言われる筋合いは無いんだよ!僕の勝手だ!」
「っ……」
アルはアルで焦っていた。上達がほんの僅かしか見られないのだ。
そもそもこの練習法は元々魔力の少ない人間に適したもの。アルは魔力の限界値が元々高かったために、魔力が底上げするどこかこの練習法に慣れるのでやっとだったのである。
しかし、魔力を短期間で増大させる方法はこのやり方しかない。頑固なアルは他人の心配なんか気にすることなく身を削っていた。
「帰れ!君は昼食でも食べてたら良い!目障りなんだよ!」
「っ……もういいです!見損ないました…貴方なんか勝手に爆発して誰に見つかることもなく倒れてればいいんです!」
「くっ……!」
エルザはアルの聞き分けの無さに呆れ失望した。
今のアルに、日々委員長の座を(勝手に)争っていたときの巧みな言論は見られない。
そして、自分の気遣いをいつまでも蔑ろにされることに耐えられなくなったのだ。
普段は表情の固いエルザだが、この時ばかりは目に涙を浮かべて走って去って行くのだった。
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