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(大丈夫…もう慣れたはずだ。誰の手も借りる必要はない。)
アルは爆発の度にエルザに肩を貸してもらっていた。
その度に他人の力を借りねば上手く歩けることができない自分の不甲斐なさに苛まれ、もどかしい気持ちを抱いていた。
「………」
アルは目を閉じる。そして静かに魔力の放出を始めた。
「もっと……もっと………」
徐々に放出量が増えていく。アルの周りの空気が雷属性の魔力によってパチパチと音を立て始めた。
「……はっ……はっ……!」
魔力の減少がアルに限界の接近を知らせる。アルは徐々に息を切らしていく。
そして、
「……うぁっ………あああああああああああっ…………」
魔力の減少がアルの生命維持に必要な域に達しようとしている。ここで魔法を使って一気に魔力を使うことで、生命維持域を刺激して魔力を無理矢理引き出すのだ。
そこでアルは雷球を発動しようとした。
「サン…『ズキッ』……ッ…しまった!」
『ッーーーーーーー!!!!』
「グハッ!!!?」
締めの雷球を使おうとしたアルの体内にはち切れんばかりの痛みが襲った。失敗の証だ。
魔法の発動に失敗した雷球はアルのゼロ距離で膨張して爆発し、アルを修練場の壁へとぶっ飛ばした。
(情けない…!)
死ぬ間際のように時がゆっくりと流れる。アルは空中で自己嫌悪し、エルザに大口を叩いたさっきの自分に後悔するのだった。
エルザの言ったように、今自分は勝手に失敗して壁に叩きつけられようとしている。
手を貸す人間はこの場にいない。このままでは午後の授業を勝手に休むことになる。
アルは何もかも諦め、勢いに身を任せることしか出来なかった。
「『雷掣(らいせい)』」
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