30844人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーーーーーー
「アルはどうした?」
「……」
時は夜。ソルト家の食卓にアルの姿は無かった。アルは屋敷に帰ってから部屋にずっと閉じこもっているのだ。
エルはアルの通例の席を一瞥し、ため息をついた後に答えた。
「思春期だ、父さん。」
「なぬ……」
「あらあら…」
余計な事を吹き込んで親に心配かけたくないと思うのはアルも同じはず。
エルは親にとって我が子に触れ難い言葉と思われる言葉を選んで牽制を図った。
ウルとサヤは感慨深い表情を浮かべてそれぞれの反応を示した。
(あ。)
気のせいであろうか?両親の背後、その奥で待機しているマリーの横にいるシェイミーの目がギラギラしている気がする。
「そうか……アルももう16歳か。大きくなったな。」
「そうね…!そろそろ女の子とか連れてくるかもしれないわね。」
「ほう……エル、後でアルに夕食を届けてくれないか?」
「あ、ああ…。」
(あれ…もしかして余計な事言った?)
予想と異なり、逆に両親の意識がアルに向いてしまったことにエルは戸惑う。
エルは冷や冷やしながら食を進めていった。
「アル…飯持ってきたぞ。」
夕食後、アルの部屋の前。エルはアルに呼び掛けた。
「……?」
しばらく様子を窺うが返事は無い。それは予想済みだったが、物音一つ無いというのはエルにとってどこか違和感を感じた。
「開けるぞ。」
御盆を持たない方の手で部屋の扉のノブに手をかける。エルは躊躇なく扉を開けた。
部屋を見渡すと、ベッドに寝転ぶ金髪の少年が一人。
(寝てるのか…)
エルはアルの机の上に夕食を乗せた御盆を置いた。
最初のコメントを投稿しよう!