成金の精進!!

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「………いや、ほら、そろそろ本格的に人目を気にしなければならない歳だろう?せめてもの努力をだな……」 堂々と言い切れない俺がいた。何を言おうとしても俺に言えたことではないものばかりだからだ。 だが、せめて……せめて身内の人間くらい見返したいものだ。めげずに幾度となく怒号を上げてくれた父上には良い意味での報いを捧げたいものだ。 「………」 調子に乗った事を言ったかもしれない、思わず冷や汗が伝った。 アルはただを哀れむような目で俺を見ていた。大方、また口から出まかせを言ったように見えているのだろう。 「五大貴族の恥となり、ただ親の七光りとして生きてただけの貴方が随分と大口を叩きましたね。まあ貴方がどうしようと迷惑を掛けられない限りは構いませんが………。 ───ここ、今から魔法の練習に使うので退いてもらって良いですか?“上級”魔法の練習をするので。」 「うぐっ……」 反論の余地の無い棘口に思わずぐうの音が出た。自然と右手が胸の辺りに向かっていた。 くっ……まあ良い、もう試したいことは全て済ませたのだ。潔くここから立ち去ってやろうではないか。 「………わかった。さっさと退くとしよう」 「………」 俺の言い草が気に食わなかったのであろうか。アルは酷くつまらなさそうな顔をしてそっぽを向いた。 ……何にせよ、今の俺にはどうすることもできない。俺が認めてもらうには、まず生き方そのものを変える必要が有るのだろう。 今世界生活初日、俺は肩を落とすしかなかった。
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