成金の精進!!

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ソルト家西側、使用人達の部屋にて。 ここは使用人が寝泊まりをしている棟だ。幼い頃からここはあまり立ち入った事が無い。 視線を彷徨わせていると、とある一室から一人の侍女が出てきた。 「………」 な、何か貫禄のある人が出てきた。侍女の中でも格のある人なのだろうか。見た事はあるがどのような人物なのかあまり把握していない。 「あの、ちょっといいか?」 とりあえず話し掛けてみる。この人数の中マリーを見つけるのは難しいのだ。 それでもかなり緊張する。ソルト家は女性率が高いのだ。女子寮と決まったわけではないが、イケない場所に居る感覚が俺を襲っている。 「おや、エル様ではないですか。わたくし共に何か御用でも?」 貫禄ある侍女はまさかここに俺が来るとは思ってもいなかったのか、 少し驚いた様子で言葉を返して来た。まず男がここに居て良いのか聞きたいくらいだ。 「いや、マリーはいるかな……なんて……」 「マリーに何か?現在エル様は侍女に立場と聞いておりましたが。」 き、厳しい……。おや?あの胸元の裾にある緑色のブローチは……確か侍女筆頭のの証だったような……。 ……もしかして、この人は父上の専属侍女ではなかろうか。俺はとんでもない(家庭内)権力者に話しかけてしまったのかもしれない。 「いや、父上にそう言われたから自分で厨房に入ってみたんだ。そうしたら意外と興味が湧いてきて……作ってみたからマリーにも食べてもらおうと思ったんだ。」 「そうですか、マリーは現在買い物に出かけております。わたくしが代わりに渡しておきましょう。 ……それにしても、料理にご関心を持つとは素晴らしいと思います。旦那様の御指導は間違ってなかったようですね。侍女としても誇らしいです。」 やはり……この方は侍女の長だったようだ。長い間貴族に仕えると侍女はここまでの風格が板に付くものなのか。侍女の世界も馬鹿には出来ないな。 マリーは買い物中か、正直反応が楽しみだったのだが……。 「では、よろしく頼む。」 「承りました。」 侍女筆頭は俺からクッキーの入った袋を受けとると、丁寧に持ち去って行った。
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