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緊張が溶けた後、俺は再び自室へと戻った。この屋敷は移動に時間がかかるから疲れるものだ。
窓から外を見ると夕日が空を赤く染めていた。日の大きさを見て、改めて此処は地球ではないのだと実感してしまう。
ふと、学園の荷物が目に入る。明日からこの荷物を持って学園行くのかと思うと少し憂鬱な気分になった。
このソルト家から王立スローラル学園までは徒歩30分程度で行ける。それでも一日に必要な量を持つだけでも辛いということは何となく理解出来た。
前世では大学生だったから忘れていたが、そういえば高校生の頃は毎日の様に重い教材類を運んでいたような気がするな……。
「………………ん?」
おや?そういえば、俺は『別空間に物体を保管する能力』などという便利な能力を持っていなかっただろうか。
おお、これはテンションが上がる。この場面で使わない手は無いだろう。
通学鞄の置いてある机に近づき、鞄から教材のおよそ半分程度を取り出した。全てを収容空間に仕舞い込んだらきっと怪しまれるだろうからな。
「えっと………どうやるんだ?」
そう言葉を口に出した瞬間、俺の頭の中にとある“説明”が文章となって流れ込んで来た。まるで元から知っていたかのような感覚だ。
なるほど……神はやはり規格外という事か。
その文章は『空間収容能力』の使い方に他ならなかった。今の俺には一連の動作が手に取るように分かる。
よし、早速試してみよう。
俺は机の横に手をかざす。そして映像を頭に映し出し、念じてみた。
「……おお。」
手を翳した先に白い靄(もや)が現れる。そして、それは直ぐに渦巻き出した。
ここに物を入れれば良いようだ。
空間に教材を放り込んでみる。すると、それらは本当に白い靄の中に消えて行った。どうやら成功したようだ。
用を終えた空間の裂け目は直ぐに消えた。
「今度は取り出してみるか。」
収容空間をまた開く。取り出したいものを想像して中に手を入れると、何かが手に当たったのが分かった。それを掴んで引き出すと、念じたものと同じ教材であることがわかった。
「おお……」
銀行でお金を引き出す様な楽しさがあった。これはかなり使える。当面の登下校はこれで楽をするとしよう。
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