成金の精進!!

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「ふう………」 一息つき、机の横のベッドに腰掛ける。考えてみると、全てを一人でするというのはエル・ソルトとして何年ぶりの事なのだろうか。 もしかすると生まれて初めての事かもしれない。だからこそ俺は軟弱に育ったのだろう。体も、精神も。 窓から外を見ると、俺がどうこうしている間に景色が薄暗くなっていることに気付いた。 ああ……今度は晩飯作らないといけないのか。前世でも面倒だと思っていた事だ。しかしここをサボれば寝る前に腹を鳴らす事になる。それだけは避けたい。 ………また向かうとするか。 厨房にて軽い料理を作り、食堂のいつもの大きな長机の一席に着いた。 既に父上、母上、アルの三人がお揃いだった。何かを言えるわけでも無く大人しく席につき、料理に手をつける。 家族と食事を摂るのは昨日振りだ。とはいっても、俺はほとんど話さないから一人で食べているようなものだが。 「エル、明日から学園の新学期が始まるわね。」 「はい、そうですね…………うん?」 特に何がきっかけというわけでもない。全く食事とは関係の無いことだ。 ただ、それは胸に痞(つっか)えて取れなくなってしまった。明日の気がかりがまた一つ増えたのだ。 「ごちそうさま。」 手軽な食事なので早く食べ終わり、一人食器を持って立ち上がる。控えの侍女が俺の持つ食器を取り上げるべきか迷って動揺しているのが分かった。 目配せで大丈夫だと聞かせる。おい、そんなに驚いた顔をするんじゃない。
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