王立スローラル学園

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自室に戻って壁に掛けてあった制服を取り出し、袖に腕を通す。手慣れた感覚がある事に違和感が無いのはこの世界で生きて来た俺の記憶があるからだ。 今日の準備は昨夜のうちに済ませた。僅か一分で万全の態勢になった。 実に充実した穴だと鼻高くしていると、部屋の戸を叩く音が聞こえた。 そう言えばもう使用人が目覚める時間か。おそらくマリーだろう。 「失礼しまええっ!?エル様もう制服着てる!?」 「………朝からうるさいぞ、マリー。」 俺の状態を見たマリーは大声を上げた。朝の澄んだ空気がその大声を響かせる。うむ、うるさい。 そんなことより、だ。マリーにはもう俺を起こしに来なくても良いと言ったはずなのだが。 「───あ!?す、すみませんエル様!しかしまだ朝食が───」 「もう済ませたぞ。」 「んええっ!?」 斬新な驚き方だ。しかしその円を作り出す腕の動きとバレリーナのような爪先立ちは何処かで見たことあるような気がする。 「………もう俺の世話をしなくていいと言ったはずだが。」 「おッ……“俺”!?」 「あ……」 いや、あじゃない。もうこれで通すと決めたはずだ。どちらかに決めないと後々ややこしい事になる。 イメージチェンジだ!このまま突き通す!その割には前世の記憶が強過ぎて全然違和感を覚えないのだが……。 「気にしなくて良い。それに世話もしなくて良い。」 「し、しかし!私はもう何年もエル様にお仕えしております!今さら習慣を変えるのも難しいものでして……」 「…………そうなのか?」 成る程、強いられて俺の世話をしているわけではないという事か。マリーにもマリーの都合というものが有るのだろう。 面倒くさい世話を習慣だからと片付けられるのも凄い事だが。父上の指示に背く事にならない程度に、頼る事にしよう。 「なら、服の用意を頼む。」 「いえ、他にも洗濯など───」 「もう終わった。」 「ええっ!?」 甘い。今の俺をそう簡単に世話できるとは思わない事だ。伊達に前世で一人暮らしをしてはいない。 いや、洗濯に関しては魔力式浄化装置で数分だったのだけれども。
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