王立スローラル学園

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「それでは行ってくる。」 「はい!行ってらっしゃいませ!」 「…………」 マリーに見守られながら屋敷を出発。今世の別れかのように手を振るのはやめて欲しい。初めてのお遣いじゃないんだから。 歩くこと数十分。 何の問題も無く到着した。俺の目の前には横に巨大な建造物が佇んでいる。慣れた景色にもかかわらず相変わらず圧倒されてしまうものだ。 この《王立スローラル学園》はスローラル王国内の資産家や実力者の集まるレベルの高い学園だ。教師は王城で特殊な訓練を受け認められた人材で組織されている。 この学園は優秀さによってクラスが異なるシステムになっている。各階生ごとに上からS、A、B、C、Dクラスとレベルが割り振られており、Sクラスには特に最も優秀な生徒が集まっている。 このクラス編成、実は俺は実技の面で担当教師に圧力をかけていた。魔法が苦手な俺を高評価にするよう根回しをしたのだ。城から派遣された教師であろうと、五大貴族という権力者に逆らう事は忍びなかったようだ。 唯一得意な座学と合わせ、俺は高等部の三年間をSクラスで過ごして来た。情けない話である。 目的地は学園長室。校舎に入って右に進み、突き当たりにある部屋が学園長室だ。読み通り、長期休暇明けという事で多くの教師が既に出勤していた。 「っと………ここか。」 両開きの大きい扉。学園長がこの部屋の中にいることを願い、扉をノックする。 「はーい、どなた?」 扉の向こうから女性の声がする。遠慮の無い言葉が返ってきたという事は間違い無く学園長だろう。 俺は失礼すると言いながら部屋の中に入った。 「何のよ───あら?」 「………久方振りにお目にかかる。」 「三階生、エル・ソルト君か……こんな早くに来たって事は、何か話があるみたいね。」 「お気遣い痛み入る………」 これは緊張する。 ここに入るのは初めてではないが、持ちかける内容が内容だけに気楽には居られない。 さて………どう話したものか。
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