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意識が薄っすらと起き上がる。先程も目覚めなかっただろうか。いけない、二度寝をしてしまった。
焦った俺は勢い良く体を起こし、ベッドから下りようとする。
が、そこで違和感に気付いた。
「……んん?真っ白だ………」
寝ぼけ眼で瞼を開けると、そこは何も無い真っ白な空間だった。周囲にベッドなんか有りはしない。
次の瞬間、俺の目は一気に覚醒する事になった。
『……目覚めたか?』
「ッ……!?」
突如、どこからともなく頭に直接語りかけてくるような声が聞こえたのだ。俺は突然の事に驚き、辺りを見回した。
「こっちだ。」
「だ、誰だ!?」
背後から呼びかけられた。俺は警戒しつつ即座に振り返った。
そこに居たのは白い髪と髭を生やした老人だった。座禅を組んだまま宙に浮いている。
突然の非現実的な光景に瞬きを繰り返してしまう。
「私は那由他もの世界を管理するものだ。今回はお前に用があって呼び寄せた。」
「は?え?え?」
さらなる非現実的な言葉の組み合わせに訳の分からない反応をしてしまう。落ち着け、冷静になるんだ。
“那由多”……多いって事だよな……それだけの世界を管理しているって事は……。
え……?神……とか?
「お前らの世界ではそういうことになるかもしれないな……」
「なっ……!?俺の心が読めるのか!?」
「神だからな。」
何て恐ろしい存在だ。流石多くの世界を管理するだけある。何でも有りだな。
でも、神だからと言って心を勝手に覗かれて嬉しいものではないな。
俺がそう頭で考えると、老人は不機嫌そうな顔になった。
「老人ではない。せめて“神様”と呼べ。」
老じ───神様はそう言って眉根を顰めた。どうやら俺の心中での呼び方が気に食わなかったようだ。
本当に、申し訳ありませんでした。
「わかれば良い。」
「………」
何も考えるな。絶対に生意気だなんて考えてはいけない。 おい馬鹿、俺。
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