王立スローラル学園

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「おら、教室着いたぞ。此処で待ってろ。」 「!」 いよいよだ。緊張して手に汗を握ってしまう。 ティム教諭は何の合図も無く教室の戸を開け放った。 「おら!いつまで騒いでやがる!早く席に着け!」 ガラの悪い怒号と共に教室内の生徒は一斉に席に付き始める。直ぐに教室内の喧騒は静まった。 あの、逆に緊張するのですが。 「先生!このクラスにあのエル様が編入してくるって本当ですか!」 「あれ?なんで知ってんだ?」 生徒の一人が投げ掛けた質問にティム教諭が驚いている。 いやいや、何で知っているんだ!俺がさっきから頭の中で考えていた自己紹介の意味が! 「Sクラスのオルドックがその話をしていました!」 アイツか! 「ん~……誰だか知らねぇが、もう知ってんなら手っ取り早いな。おら、入ってこいよ。」 「………」 予想だにしない展開に俺は気まずさで満ち溢れた。あわよくばこのまま走って逃げ出したいものだ。 ……….そういうわけにもいかないか。 俺が教室の中に足を踏み入れるとしん、と静かになった。皆が俺に注目している。 幸いにも、以前の俺はあまりBクラスの方へは通った事が無い。俺の事を直接見る機会が少ないからか、そこまで警戒される事は無いようだ。 しかし、目線を避けられるのはやむを得ないか。 「Sクラスから編入してきた、エル・ソルトだ。知っているとは思うが、属性は雷。俺は家柄の関係でひいきにされがちだが、そんなものは関係ない。気軽に話しかけてくれ。」 俺が五大貴族でも、態度までも畏まる必要はないと断りを入れておく。俺と同じ五大貴族の四人は階級を経るたびにそう自己紹介をしていた。 真似しておいた方が良さそうだ。 「つーわけで、今日からコイツがこのクラスに入る。宜しくしてやってくれ。」 疎(まば)らな拍手。皆、俺との距離感をつかみかねているようだ。 当然だ。目の前にいるのは自分達より遥かに権力を有しているのだから。 そんな中ではしっかりと話せた方だろう。この程度の気まずさなら何とかできそうだ。
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