王立スローラル学園

20/24
前へ
/453ページ
次へ
「やっぱり旦那様もそう思われますよね!?エル様がお菓子を作る、ましてやそれをマリーにプレゼントするなど、失礼ではありますがとても考えられません!」 「う、うむ……そうだな……」 マリー。息子の専属侍女である彼女をウルが知らないはずがない。疑いの目を向けながらも、側にいるもう一人の侍女の言葉を鵜呑みにしてしまう。 「本当です!本当なんです!!」 「しかしな……今までのエルからは想像できん……やはりシェフに作ってもらったのではないか?」 「ほ、ほんっ………ううぅっ……!」 「なっ……!」 「ちょっとマリー!?泣いてるの!?」 何時までも否定を続けていると、エルの専属侍女マリーの目に涙が溜まり始めた。ウルともう一人の侍女は驚き慌ててしまう。 「どうしてお二人ともわかってくれないんですかぁ!エ゛ル゛ざまはもうお変わりになられました!旦那様はその為にエル様に罰を与えたのではないですか!」 「……! わ、私が……?」 疑問が膨らむ。 今まで何度も息子の教育について悩んだ事があった。何度もどこかで間違えたのではないかと思い悩んだ。 本当に自分が変えたのかと、ウルは疑念を抱える。 「恐らく……エル様はご自分を捨てたのです……」 「な、何を言っているの……?」 「エル様は今までのご自分を捨てられたのです!自分の呼び方を変えておられました!大切に伸ばしていた髪を躊躇無く切り落としました!私にかける言葉には優しさと威厳が加わり、口調も……!」 マリーの表情が瞬く間に崩れていく。必死に発している言葉とは対称的に表情は悲しそうだ。 「……大丈夫か?」 「はい……旦那様、私はエル様が善良な人間に変わるのなら嬉しいです。しかし、このまま変わっていったのなら私はエル様のために何ができるのでしょうか?」 「なに……?」 「恐いのです!エル様に頼られる事こそが私の生き甲斐なんです!ただの屋敷侍女として働く事が苦痛で仕方ないんです!」 「き、君は……。そうか……十八の時からもう十年にもなるか。」 十年前、ソルト家は一般の学園を卒業した十八歳のマリーを雇い、まだ幼かったエルの専属侍女として就けた。彼女はエルを何処か年の離れた弟のように感じていた事だろう。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30840人が本棚に入れています
本棚に追加