王立スローラル学園

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もう一人の侍女にマリーを任せ、ウルは頭の中をエルでいっぱいにしながら執務室へと移動した。 「私は……エルに間違ったことを言ったのだろうか……」 “最低の人間”と自分の息子に言ってしまったウル。彼は父親として、果たして本当にその心を理解していたのだろうか。 そんな事を考えながら頭を抱えようとしたそのとき、部屋の戸を叩く音がウルの耳に入った。 「旦那様、学園から速達のお便りでございます。」 「む、学園から速達?何の通知だ?」 普通ならば有り得ないこと。ウルは怪訝な表情を浮かべて手紙の封を開けた。その手紙には、こう記されていた。 『本日早朝において、ソルト様の御嫡男、エル・ソルト様がご自分のクラス編成が不適切なものであると訴えられたため、再審査を行ったところ、エル・ソルト様に適切なクラスは、SクラスではなくBクラスであることが相応しいと判断されました。 したがって、本日よりエル・ソルト様のクラスはBクラスに編集されたことをここにご報告いたします。何かご意見があるようでしたら、学園の方へお便りをどうぞよろしくお願いします。 スローラル王立魔法学園。』 「…………は?」 手紙を読み終えたウルは呆気に取られた。衝撃のあまり口が塞がらなくなってしまっている。頭の中が余計に混乱し始めたようだ。 いよいよ本当にウルが頭を抱えると、またしても執務室の戸を叩く音がウルの耳に入った。 「私よ。」 「ああ……入れ。」 「あの、ごめんなさいね?今朝はかなり取り乱してしまったわ。私もウルの仕事をしっかりとサポートするから……?どうしたの?深刻そうな顔して。」 部屋に入りながら謝るサヤ。しかしそこに居たのは口を開けたまま固まっている夫の姿。あまりにおかしな光景にサヤは疑問符を浮かべる。 対し、ウルは直ぐに顔を神妙にして訳をサヤに打ち明けた。 「エルが……自らのクラス降格を名乗り出たらしい。」 「え!」 ウルと同じ様にサヤも驚いていた。それも当然、五大貴族がSクラスを降格しようとするのは自分で自分の首を締めることと同じなのだから。 「私は、父が貴族になる前まで平民として暮らしてきた……生まれながらに恵まれていた環境で育ち、過ちを繰り返して来たエルに対して今何をしてやれるのか、私にはさっぱりわからない……。 私は……エルにとんでもない事をしてしまったのではなかろうか。」
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