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「ミヅキセンセー、またねー」
「ミヅキちゃんまた明日ーテストの答えおしえてー」
「はいはい、また明日ねー。後テストの答えなんか教えるわけ無いでしょー」
センセーなんか枯れてるー、とけたけた笑いながら、生徒が手を振り別れを告げた。
そんな事無いわよ!言い返そうとしたけれど、彼女達は既に私に背を向け、おしゃべりに興じている。
北風に彼女達の短いスカートがふわりと泳ぐ。
昔は私もあんなスカートを履いて足を出していたけれど、今じゃちょっと考えられない。
ストッキングとタイツは必需品で、職員室ではこっそりひざ掛け毛布を使ってる。
そういう意味では、枯れてるのか…少し自分の年を感じて気分が沈む。
夕暮れの学校。
校舎がのっぺりとした影を伸ばす。
受け持ちの教室と職員室が別々にあるから、帰りのHRを終えたらいつもこの廊下を通らないといけない。
壁らしい壁の無い廊下。
しかも夕暮れ時に校舎の影が差し込み、北風まで吹きつけるので凍えてしまっていただけない。
「さむっ」
出席簿を小脇に挟んで、凍えた指先に息を吹きかけ暖める。
早足で職員室に向かおうとして、ポケットに振動を感じた。
マナーモードにしたスマートフォンが、ぶるぶると震えている。
取り出して画面を見れば、メールの着信を告げていて――それから、その送り主も。
本文を見ると、そこには顔文字と絵文字とデコで彩られた、短い内容。
『センセに会いたい』
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