-Prologue-

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カタカタと乾いた音が質素な部屋に反響する。 明かりは沢山のメモリが接続されたパソコンの、デスクトップのスクリーンから零れる光だけだ。 光はパソコンの前に座る男性の影を黒く大きく壁に投影していた。 タン、と小気味良い音を立てて、エンターキーが押される。 「長かった……」 パソコンの前に座る男性は、1つため息を付き、固まった身体から力を抜いた。 デスクトップに映し出されているのは長い長いプログラムのソース。 今は不具合が無いかチェックするデバッグシステムが動いている。 しばらくパソコンのファンが回る音だけが部屋を支配した後、画面にはデバッグが正常終了した旨が表示された。 それを見た男性は、思わず口の端を吊り上げる。 そして、迷わずプログラムを起動した。 ハードディスクが唸りを上げて処理を開始し、連結しているメモリも次々に熱を放つ。 あっという間に温度が上がった部屋で、男性は写真立ての前に置かれた赤いワインを手に取った。
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