手作りお弁当。

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 12歳の日本人、ジャックはラケットをぐっと力強く握りしめた。 「ここで、サーブを決めれば優勝だ」  ジャックはテニスボールを天高く放り投げた。テニスボールと太陽が一瞬重なる。 「くらえーー!!」  ラケットのスイートスポットに当たったジャックの放った強烈な一撃は、相手のサムのコートに見事に決まった。  ジャックの優勝が決まった直後、会場からは割れんばかりの拍手喝さいが起こる。 「ふっ!」  ジャックは髪を右手でかき上げた。 「すごかったわ」  幼馴染の恋人、色波は春の穏やかな風にブロンドの髪を揺らしながら、両の掌を合わせて歓喜の声を上げた。  ジャックはドカッと太陽で熱せられたアスファルトに腰を下ろす。 「ほれ! ご褒美の手作り弁当は?」  ジャックは催促するように首を軽く動かした。 「分かったわよ」  色波は持参した弁当箱を開ける。弁当箱からは香ばしい匂いが湯気となって辺りへと消えて行く。 「さっき試合が始まる前にレンジでチンしたから、まだ温かいわ」 「お前が作るこの料理は黒や茶色い色はともかく、何とも言えない食感や味は最高だぜ。隠し味もあることだし」  ジャックの言葉を聞いた色波は照れながらも、それらのおかずを小さな薄いピンク色の口へと運ぶ。  くちゃくちゃくちゃくちゃと音を立てて、しばらくの間、色波はおかずを噛み砕く。  色波の頬はほんのりと桜色に染まっていた。 「はひぃ! もうひぃわよ。ほら、あーんひて」  色波は噛むのを止めてジャックに言った。  ジャックは少し恥ずかしそうにもじもじとした後、やがて口を開いた。  色波は口を近づけ、ジャックの口内へと噛み砕いたおかずを舌を使い、少しずつ流し込む。 「ありがとう。これで、次の大会へのやる気がでたよ」  ジャックは色波の目を真直ぐに見て言った。 「バカ!」  色波は恥ずかしそうに言った後、ジャックの胸に飛び込んだ。  次の日、口移しで食べたゴキブリの卵が体内で孵化して、ジャックは死んだ。
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