家畜

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「そして、保護する前に子供が亡くなっていた場合、有無を言わせず実験体になります。生き返らせることなど不可能ですから、反省しても遅いですし」  事も無げに言うと、マクシムは机上の書類を見下ろした。 「また、雄の場合は、その多くを使い捨ての実験体にするそうです。雌の場合は、実験体の他に稼げる方法が有りますので、送られてくる割に実験棟に残る数は多くないです」  そう言って書類を手に取り、マクシムは淡々と言葉を続けた。 「ニコライ様曰く、子を育てる気は無いのに子を成す行為が好きであるのなら、望み通りにしてあげよう……と。いやはや、屑共のことさえ気遣うとは、何とも優しいお方ですよ」  それを聞いたアランは微苦笑するが、何かを言うことはしなかった。そのせいか、マクシムは尚も話を続けていく。 「私達の仕事は、屑共の処分が決定した後ですね。始めのうちに、抵抗は無駄だと教えなければなりませんし。屑共は拘束された状態で運ばれて来ますが、ずっとそのままの姿勢でいれば実験に供せない体になりかねませんから」  そう伝えると、マクシムは持っていた書類を封筒に仕舞った。彼は、そうしてからもう一つの書類を指先で掴む。 「拘束は続けるにせよ体勢は変える。その際、暴れられても困るので、押さえ込む為に力の有る人間が必要ですから」  そう言って書類を揺らし、マクシムはアランの顔を見た。一方、アランはマクシムと目を合わせてから書類を一瞥し、細く息を吐き出した。
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