家畜

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「きつく縛り続けたせいで組織が壊死し、それによって全身の状態が悪くなる可能性も有ります。ですから、調節が必要なんですよね。まあ、拘束を解く度に暴れる場合も有るので、その場合はまた別の話ですが」  マクシムは、そう言うと口角を上げ目を細めた。そして、彼は持っていた書類を封筒に仕舞い机上に置く。  対するアランは、無言でその様子を眺めていた。しかし、どうしても気になっていたのか、不安そうに疑問を口にする。 「やるべき仕事は、大体理解しました。ですが、ここに留まるかすら未定なのに、捕まえてさえいないうちから情報を?」  それを聞いたマクシムは目を細め、それから落ち着いた声色で説明を始める。 「憎しみは、時間と共に育っていきますからね。直前に聞くよりも、より屑共を憎むことが出来る。そして、人は憎む相手を傷付ける事を、快楽とさえ感じることがあります」  そう言って口角を上げ、マクシムは言葉を付け加えた。 「まあ、これはニコライ様の受け売りですがね」  マクシムは、そう言ったところで微笑し、手に持った封筒を見下ろした。 「あ、そうそう。読み終わったら、封筒毎返却します。私達が持ち続けても仕方無いですし、不要になった際に処分するのは彼らの仕事ですから」  それを聞いたアランと言えば、腕を伸ばして封筒を掴んだ。そして、彼はマクシムの目を見つめ、柔らかな声で言葉を発する。 「でしたら、俺が持って行きますよ」  そう言って封筒を上に引き、アランはそれを手元に引き寄せた。対するマクシムはやや驚いた表情を浮かべ、それからアランの目を見つめ返す。
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