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「それではお願いします。カウンターに行って、その封筒を渡してきて下さい」
その指示を聞いたアランと言えば、肯定の返事をしてから立ち上がった。彼は、その後直ぐにカウンターへ向かい、そこで封筒を男性に渡す。
そうしてからアランはマクシムの元へ戻り、先程まで居た席に腰を下ろした。この時、マクシムはアランの姿を目で追っており、対象の動きが落ち着いたところで口を開いた。
「アランさんは、テストステロンというホルモンをご存知ですか?」
突然問われた者は目を丸くし、苦笑しながら問いに答えた。
「聞いたことは有りますが……詳しく説明しろと言われても、無理ですね」
それを聞いたマクシムは微笑み、それからゆっくりと説明を始める。
「筋肉を増大させたり、ある衝動を増進させたりするホルモンです。また、闘争本能を高める作用もあるらしいですね」
そこまで言って言葉を切り、マクシムは静かに息を吸い込んだ。
「テストステロンは、雄では雄にしかない器官から分泌されます。アンドロゲンと言うホルモンも同じ様な作用を持ち、同じ様な場所から分泌されます」
そう言って机上で手を組み、マクシムは口角を上げてみせた。
「こんなホルモン、家畜の体内に多く流れていたら、管理するに当たって邪魔でしかないとは思いませんか? 実際、様々な家畜において、純粋な雄のままで居られる個体は限られていると言いますし。第一、ここへ運ばれてくる屑の遺伝子なんて、残したって仕方が無いですからね」
その話を聞いたアランは息を飲み、何も言わぬまま話を聞き続けた。
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