家畜

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 翌朝、早くに目覚めたアランは、ベッドの上で微睡んでいた。そして、数十分したところで大きな欠伸をし、立ち上がりながら腕を伸ばした。  彼は、気怠そうに着替えを用意し、それを持って運動場へと向かう。アランが運動場へ向かった時刻は、昨日と大差なかった。しかし、彼がストレルカと出くわすことはなく、アランはどこか寂しそうに体を動かした。  その後、アランは食堂で朝食を済ませ、実験練へと向かっていった。そして、マクシムと共に残飯で作ったものを配り、それを終えたところで資料室へと向かう。  資料室は相変わらず静かだった。また、アラン達が会話用の部屋へ入ってから、直ぐに呼び出されることもなく時間は過ぎていく。  しかし、それは一時間程の話で、部屋に備えられたスピーカーからは二人を呼び出す声が響いた。 「マクシムさん、アランさん、聞こえておりましたらD―1迄お越し下さい」  それを聞いたマクシムは目を瞑り、細く息を吐き出した。 「さて、聞こえてしまいましたし向いますか。心の準備は、出来ていますか?」  そう言って目を開き、マクシムはアランの目をじっと見つめた。一方、アランは胸に手を当てて深呼吸をし、それから問いに対する答えを返す。 「はい、一日経ちましたから流石に。と……昨日読んだ資料に関することで、間違っていませんよね?」  それを聞いたマクシムは頷き、それから穏やかな声で言葉を発した。 「ええ、昨日の資料に関することです。その場所まで案内しますから、早速向かいましょう」  そう言って立ち上がり、マクシムは会話用の部屋を出た。彼を追う様にしてアランも部屋を出、二人は指定された場所へと向かって行く。  二人は移動中に階段を下り、より地中深くのエリアに達した。その後も廊下を幾らか歩き、マクシムは重々しいドアの前で立ち止まる。  そのドアには『D-1』と書かれたプレートが嵌められており、マクシムはそれを指差しながら口を開いた。
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